院長インタビュー

「大腸がん死ゼロを目指して」
検査で救える命を、一人でも多く
医師を志したきっかけは?

私が医師を志した原点は、高校生の頃に家族ががんを患った経験です。
当時、患者本人だけでなく、その家族もまた大きな不安や葛藤を抱えながら病気と向き合っていることを身をもって感じました。診察室で交わされる医師の一言が、患者様やご家族にとってどれほど大きな意味を持つのか。その姿を見ながら、「医療を通じて人を支えられる仕事がしたい」と考えるようになりました。
医師になってからは消化器内科を志望し、昭和大学横浜市北部病院で大腸内視鏡の世界的権威である工藤進英先生に師事しました。そこで内視鏡診療の奥深さと、大腸がんを予防する医療の重要性を学びました。
その後、神戸大学大学院を修了し、佐野病院消化器センターで内視鏡診療の研鑽を積む一方で、神戸大学病院の腫瘍・血液内科では約10年間にわたり、がん薬物療法や遺伝性腫瘍の診療、がんゲノム医療に携わってきました。
振り返ると私は、がん医療のほぼすべての段階に関わってきました。
- ポリープの段階でがんを予防する医療。
- 早期がんを見つける医療。
- 進行がんに対して抗がん剤治療を行う医療。
- がんゲノムや遺伝に関する医療
- がんの終末期医療(人生の最終段階における医療)
そのすべてを経験してきたからこそ、今強く感じるのは、「もっと早く介入できれば救える人がいる」ということです。
がんになってから最善を尽くすことも大切です。しかし、本当に理想的なのは、がんになる前に防ぐこと、あるいは治療可能な早期の段階で見つけることです。
私はこれまで学んできた内視鏡診療とがん診療の経験を活かし、地域の皆様に質の高い予防医療を届けたいと考えています。それが現在の診療につながっている、私の原点です。
「私は、大腸がんを治療する医師である前に、大腸がんを予防する医師でありたいと思っています。」
なぜ大腸がんなのですか?
私が大腸がん診療に力を注いでいる最大の理由は、大腸がんが「予防できるがん」だからです。
多くのがんは早期発見が重要ですが、大腸がんは少し特殊です。大腸カメラで見つかったポリープを切除することで、がんになる前の段階で予防できる可能性があります。つまり、大腸カメラは単なる検査ではなく、「将来の大腸がんを防ぐための治療」でもあるのです。
私はこれまで大学病院や地域の基幹病院で、多くの大腸がん患者様の診療に携わってきました。その中には、進行した状態で見つかり、手術や抗がん剤治療を行っても十分な結果につながらない方もおられました。
診療の現場で何度も感じたのは、「もし数年前に検査を受けてくださっていたら」という思いです。
実際に患者様やご家族から、
「もっと早く見つかっていれば……」という言葉を聞くことも少なくありませんでした。
もちろん進行がんの治療は大切です。しかし私は次第に、「治療する医療」だけでなく、「病気になる前に防ぐ医療」に携わりたいと考えるようになりました。
大学病院には病気が進行してから来院される方が多くおられます。一方でクリニックは、症状がない方や、少し気になる症状が出始めた方が最初に相談する場所です。
だからこそ私は、がんが見つかってからではなく、がんになる前の段階で患者様と出会いたいと思っています。
大腸がんで苦しむ方を一人でも減らしたい。
そのために、質の高い大腸カメラ検査をもっと身近に、もっと受けやすいものにしたい。
それが、私が大腸がん診療にこだわり続ける理由であり、開業した原点でもあります。
三宮で開業を決めた理由は?
前職の春日野会病院で4年間院長を務めるなかで、内視鏡検査の必要性を感じていても、「遠いから」「忙しいから」という理由で受診をためらう方を数多く見てきました。その経験から、検査の質だけでなく、「通いやすさ」も医療の大切な要素だと考えるようになりました。
私は以前から、「症状が出てから検査を受ける」のではなく、「症状がないうちに検査を受ける」文化を広げたいと考えていました。特に若い世代や働き盛りの世代にも内視鏡検査をもっと身近なものにしたい。その思いを実現する場所として選んだのが三宮です。
三宮は神戸の交通の中心地であり、多くの方が仕事や買い物で日常的に訪れる街です。当院は三ノ宮駅から徒歩5分、三宮・花時計前駅からは地下道を利用して徒歩1分と、天候に左右されず通院しやすい立地にあります。
病院やクリニックは、「具合が悪くなったら行く場所」と思われがちですが、私は「少し気になるから相談してみようかな」と気軽に立ち寄れる存在でありたいと考えています。アクセスの良さは、その最初の一歩を後押しする大切な要素だと思っています。
また、内視鏡検査を受けるきっかけがないまま過ごしている方も少なくありません。そのため当院では、街頭広告や情報発信にも力を入れています。街を歩いている方が「そういえば大腸カメラを受けたことがないな」「一度相談してみようかな」と思うきっかけになれば嬉しいですね。
三宮という街から、胃がんや大腸がんの早期発見の輪を少しずつ広げていく。それが、この場所で開業を決めた大きな理由の一つです。

熟練の技術とAIで支える
安全第一の内視鏡検査
内視鏡検査のこだわりは?

私が内視鏡検査で最も大切にしているのは、「苦痛をできるだけ少なく、そして見落としをできるだけ少なくすること」です。
大腸カメラの挿入は、恩師である工藤進英先生から学んだ「軸保持短縮法」を基本としています。腸を無理に引き伸ばさず、できるだけ自然な形でスコープを進める方法で、患者様の負担軽減につながります。また、腸の長さや癒着の有無などは一人ひとり異なるため、その方の状態に応じて複数のスコープを使い分けながら、丁寧な挿入を心がけています。
一方で、楽な検査であっても、病変を見逃してしまっては意味がありません。そのため観察では、AI診断支援システム「CAD EYE」を常時使用しています。人間にはどうしても疲労や集中力の波がありますが、AIは常に一定の感度で病変の可能性を監視し続けます。私はAIが能力を最大限発揮できるようなスコープ操作を意識し、専門医の経験とAIの検出能力を組み合わせた「ダブルチェック体制」で見落としの低減に努めています。
また、質の高い内視鏡検査は医師一人では成り立ちません。当院の看護スタッフは、検査中のスコープの位置や進行状況を把握しながら、適切なタイミングで体位変換や腹部圧迫を行い、検査をサポートしています。培ってきたチームワークがあるからこそ、安全で精度の高い内視鏡検査が実現できていると感じています。2025年度の盲腸到達率100%は、このチームワークがあってこその成果だと思っています。
患者様からは「思っていたより楽だった」というお言葉をいただくことがあります。しかし私が本当に目指しているのは、「楽だった」だけではなく、「しっかり診てもらえて安心だった」と感じていただける内視鏡検査です。そのために、一人ひとりの患者様と真摯に向き合い、技術・設備・チームワークのすべてを磨き続けています。
鎮静で大切にしていることは?
「楽だった」だけでなく、「安心だった」と感じていただける内視鏡検査を目指しています。
内視鏡検査では、「楽に受けられること」も大切ですが、それ以上に「安全であること」が大切だと考えています。当院では、患者様が安心して検査を受けられるよう、苦痛の軽減と安全性の両立を目指しています。
内視鏡検査では基本的に鎮静剤(静脈麻酔薬)を使用していますが、すべての患者様に同じ量を投与することはありません。年齢や体格、持病の有無などを考慮しながら、お一人おひとりの反応を確認し、適切な量になるよう丁寧に調整しています。
私はこれまで、がん薬物療法に長く携わってきました。その経験の中で、同じ薬を使用しても患者様によって効果や副作用の現れ方が大きく異なることを数多く経験してきました。
鎮静剤も同様です。同じ量を投与しても、十分な効果が得られる方もいれば、強く効きすぎてしまう方もいます。そのため、画一的な投与ではなく、患者様ごとに最適な量を見極めることが重要だと考えています。
鎮静剤は、適切に使用すれば検査の負担を大きく軽減できる一方で、過剰な投与は呼吸や循環に影響を及ぼす可能性があります。だからこそ私たちは、「深く眠らせること」ではなく、「安全に苦痛を軽減すること」を大切にしています。
検査によって患者様の安全が脅かされるようなことがあってはなりません。
当院ではこれからも、お一人おひとりの状態に合わせた丁寧な鎮静管理を行い、安全を最優先にした内視鏡検査を提供してまいります。
説明で意識していることは?
患者様が本当に知りたいことは、お一人おひとり異なります。同じ検査結果であっても、「詳しく知りたいポイント」や「不安に感じること」は人それぞれです。
私は神戸大学病院勤務時代にMBTI®認定ユーザーの資格を取得し、人によって物事の捉え方や判断の仕方が異なることを学びました。その経験は、現在の診療における説明にも大いに役立っています。
医療者側が伝えたいことを一方的に説明するのではなく、患者様が何を知りたいのか、どのような説明なら理解しやすいのかを意識しながらお話しすることを心がけています。専門用語を並べるのではなく、その方に合わせた理解しやすい言葉で丁寧にお伝えすることで、検査や病気への不安を少しでも和らげたいと考えています。
診察後に「話しやすかった」「よく理解できた」「安心できた」と言っていただけることがあります。そのようなお言葉をいただくたびに、説明することの大切さを改めて実感します。
内視鏡検査や治療はもちろんですが、患者様が納得して医療を受けられるよう、これからも“伝わる説明”を大切にしていきたいと思っています。

検査のすそ野を広げたい
「思いついたらすぐ検査を」
院内の環境づくりの工夫は?

内視鏡検査は、検査そのものだけでなく、検査前後の時間をどれだけ安心して過ごしていただけるかも大切だと考えています。そのため、患者様の立場になって「自分が受けるならどう感じるだろう」「自分や大切な家族を安心して任せられるだろうか」と考えながら院内づくりを行いました。
特に大腸カメラでは、検査前に下剤を服用する時間が必要です。この時間を少しでも快適に過ごしていただけるよう、当院ではトイレ付きの個室前処置室を2室ご用意しています。周囲を気にすることなく、ご自身のペースでお過ごしいただける環境づくりを大切にしています。
また、内視鏡検査に対して「恥ずかしい」「不安」と感じる方は少なくありません。当院では私以外のスタッフは全員女性で、受付から検査前後のサポートまで、きめ細やかな対応を心がけています。特に女性の患者様からは、「安心して検査を受けられた」というお声をいただくことも多くあります。
そして、質の高い内視鏡検査は医師一人では成り立ちません。患者様の緊張を和らげる声かけや、検査中の的確な介助、安全管理など、経験豊富なスタッフの存在は欠かせません。私はいつも、患者様に安心して検査を受けていただけるのはスタッフのおかげだと感じています。クリニック全体で「ここで検査を受けて良かった」と思っていただける環境づくりを目指しています。
開院1年目の手応えは?
2025年度は599件の大腸カメラ検査を行いました。その中で特に嬉しかったのは、半数以上の方が「人生で初めての大腸カメラ」だったことです。
私は開業時から、「内視鏡検査は怖い」「恥ずかしい」「つらそう」といった理由で検査を受けられていない方の背中を押したいという思いを持っていました。そうした方々に当院を選んでいただき、実際に検査を受けていただけたことは、大きな手応えを感じています。
また、20代・30代の受検者が100名を超えたことも印象的でした。若い世代では「まだ検査は必要ない」と考えられがちですが、実際には約3人に1人で将来的に大腸がんの原因となり得る腺腫性ポリープが見つかりました。
もちろん、若い方全員に大腸カメラが必要というわけではありません。しかし、症状がある方やご家族に大腸がんの方がおられる方などは、年齢だけで判断せず、一度相談していただくことが大切だと改めて感じています。
さらに、女性の受診者が多かったことも印象に残っています。大腸がんは女性のがん死亡原因としても上位を占める病気ですが、検査への心理的なハードルから受診が遅れることも少なくありません。少しでも安心して検査を受けられる環境づくりが、多くの方の早期発見につながっているのであれば、これほど嬉しいことはありません。
先生ご自身の健康法は?
健康のために続けているのは運動です。40代からテニスを始め、2025年には神戸マラソンに初挑戦しました。
ただ、結果は決して格好いいものではありませんでした。25km付近で足がつってしまい、その後は走ったり歩いたりの繰り返しでした。それでも何とかゴールまでたどり着くことができました。
実はこのマラソンには、「大腸がん検診の大切さを伝えたい」という思いを込めて参加しました。診察室でお話しするだけでなく、自分自身も体を動かしながら、予防医療の重要性を発信したいと考えたからです。
大腸がん予防で大切なのは、「検査」「運動」「食事」の3つです。特に運動習慣は、大腸がんの発症リスクを下げる可能性があることが知られています。
もちろん、私自身も完璧ではありません。しかし、患者様に「適度な運動を続けましょう」とお伝えする以上、自分自身も実践し続けたいと思っています。
これからも健康管理を心がけながら、一人でも多くの方に大腸がん検診の大切さを伝えていきたいですね。
「医師だから健康なのではなく、健康でいる努力を続けることも医師の仕事の一つだと思っています。」

症状がない今こそ、検査を
一人でも多くの方の未来のために
今後の展望とメッセージを

開院2年目からは、胃カメラドック・大腸カメラドックを開始しました。
保険診療では、症状がない方に検査を行うことが難しい場合があります。しかし実際には、「症状はないけれど、がんが心配」「家族にがんの人がいて不安」という方は少なくありません。そのような方にも安心して検査を受けていただける環境を整え、胃がん・大腸がんの早期発見につなげていきたいと考えています。
また、開院1年目の診療を通じて、20代・30代でも決して少なくない割合で大腸ポリープが見つかることを実感しました。この経験を世の中に発信し続けていくことで、これからの大腸がん予防に少しでも貢献できればと思っています。
私が医師を志した原点は、家族ががんを患った経験でした。だからこそ、「もっと早く検査を受けていれば」という後悔を、一人でも減らしたいと考えています。
大腸カメラや胃カメラに対して、「怖い」「つらそう」「恥ずかしい」というイメージを持たれている方は今も多いかもしれません。しかし実際には、検査後に「思っていたより楽だった」「もっと早く受ければよかった」とおっしゃる方がたくさんおられます。
何か症状がある方はもちろん、少しでも気になることがある方、不安を感じている方は、どうかその気持ちを大切にしてください。
『思った時が、検査を受けるタイミングです。』
その一歩が、ご自身や大切なご家族の未来を守ることにつながるかもしれません。
これからも地域の皆様に信頼していただけるクリニックとして、丁寧で安心できる医療を提供し続けていきたいと思っています。